ルージュバックは桜花賞でなぜ負けたのか?“優等生”マンカフェ産駒の呪縛

単勝1.6倍の圧倒的人気を集めたヒロイン候補生が馬群に沈んだ。

4月12日に阪神競馬場で行われた桜花賞(GI/芝外回り1600m)、ルージュバック(牝3)は主役になるはずだった。3戦無敗という完璧なキャリアを誇り、前走は牝馬として51年ぶりにきさらぎ賞(京都GIII/芝外回り1800m)を制した。

“ニューヒロインの誕生”

桜花賞は、彼女がスターダムに駆け上がる最高の舞台と思われていた。

しかし、勝ったのはレッツゴードンキ。ルージュバックは直線で伸び切れず、9着に終わった。

なぜ、圧倒的人気を集めた怪物牝馬は負けたのか? 敗因に迫っていきたい。

目次

マンハッタンカフェの呪縛

一番最初に血統面のマイナスファクターについて挙げたい。

題するなら「マンハッタンカフェの呪縛」だ。

マンハッタンカフェ産駒は優等生が多い。能力のアベレージが高いため、どんな条件でも“それなりに”走る。重賞でも“それなりに”活躍する。「どんな教科でも80点以上を叩き出す優等生」。それが、マンハッタンカフェ産駒の特徴といえる。

ただ、これは決して褒め言葉ではない。総合力が高い反面、突出した能力を持っていない馬が多いからだ。

マンハッタンカフェは2009年にリーディングサイアーを獲得するほど優秀な種牡馬である。しかし、GI馬は4頭しか出していない。加えてこの4頭、中央GIを1つしか勝っていない。突出した能力がなかったため、複数回GIを勝つことができなかったわけだ。

ルージュバックにも、少なからず“優等生の血”の影響があったと考えられる。

経験不足を露呈

キャリアを振り返ると、別の要因も見えてくる。その筆頭が“経験不足”だ。

彼女はキャリア3戦で「中距離(1800m以上)」の「少頭数」における「スローペース」の「上がり勝負」しか経験していなかった。また、走った新潟、東京、京都は馬場が軽い競馬場として知られている。

初のマイル戦となった桜花賞は多頭数の競馬。しかも阪神はルージュバックが走ったことのある競馬場に比べて馬場が重たい。土曜日に雨が降った影響もあり、良馬場ながら多少渋った状態で行われていた。そんな中、スタートから後方に待機したため、馬群で揉まれることになった。

ルージュバックにとって、初めて経験することが多いレースとなったのだ。

本当にスローペースが敗因なのか?

今回の桜花賞は歴史的なスローペースとなったため、「展開が敗因」とする声もある。

しかし、その点に関しては異論を唱えたい。

たとえペースが遅くて差しきれなかったとしても、能力が高い馬であればラスト3ハロンで秀逸な上がりを使っているはずだ。だが、ルージュバックの上がりは33.6で5位止まり。勝ったレッツゴードンキより0.1秒遅いのだから、これでは言い訳ができない。

「スローペースだから差しきれなかった」と結論付けるのは簡単だが、少し安易ではないだろうか?

血統や経験不足といった様々な要因が重なったことで1.6倍の支持を裏切ることになった。そう考えたほうが、合点がいく。

オークスでの巻き返しは?

ルージュバックは今後もマンハッタンカフェ産駒の呪縛と戦い続けることになるだろう。オークスも簡単なレースにはならないはずだ。

もっとも、この馬はもともと「中距離(1800m以上)」における「スローペース」の「上がり勝負」で結果を出してきた。オークスはそういうレースになりやすいため、桜花賞より期待を持てるのではないだろうか?

果たして、ルージュバックは巻き返せるのか? それとも“怪物牝馬”の看板は見掛け倒しに終わってしまうのか? 5月に行われる樫の舞台を心待ちにしたい。

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