キズナと武豊騎手の敗北を悲観すべきではない理由とは?

単勝1.4倍の断然の一番人気を裏切った。4月5日に阪神競馬場で行われたGII産経大阪杯(芝2000m)で復活Vが期待されたキズナだったが、ラキシス(牝5)に突き放されて2着に終わったのだ。

鞍上の武豊騎手はクビを傾げ、会場からは悲鳴やため息が漏れた。レース後の報道やファンの反応を見ても「悲壮感」が漂っているように映る。

ただ、一度冷静になって考えてみたい。本当に今回の2着は「悲観視」すべき内容だったのだろうか?

目次

重なった悪条件

冷静に分析すると、キズナはいくつか悪条件に直面していた。

【産経大阪杯】キズナと武豊騎手は複数の悪条件を跳ね返せるか?

中でも馬場の問題は大きかったはずだ。阪神は雨が降り続いていた。メインレースの頃になると、馬場は不良まで悪化した。ディープインパクト産駒は良馬場で真価を発揮し、道悪でパフォーマンスを落とすタイプが多い。キズナは間違いなくそのタイプと言える。

末脚を活かしたいキズナにとって、好ましい条件とはいえなかったわけだ。

勝ったラキシスは同じディープインパクト産駒でも道悪を苦にしないタイプ。2年前のエリザベス女王杯(重馬場)では前走1000万条件を勝ったばかりの身ながら、2着に激走している。適性の差が、勝負を分けた大きな要因だったと考えられる。

1.4倍は過剰人気

そもそもキズナは十字架を背負いすぎている。

第80代のダービー馬、ディープインパクト産駒で鞍上が武豊騎手、さらに「絆」という素晴らしい名前……。キズナが愛される理由はいくらでも思いつく。言い換えれば、極めて人気を集めやすい。

メンバーが揃っていないGIIやGIIIなら単勝1.4倍は頷ける。しかし、今回の産経大阪杯はキズナも含めてGI馬6頭という超豪華メンバーだった。GI馬の他にも重賞ウィナーやGIで好走した実績を持つ馬ばかり。

その中で単勝1.4倍というのは、過剰人気だったと言わざるを得ない。

期待が大きいと、期待を裏切った時の落胆も大きい。だからこそ、悲観的なムードが作られているのだろう。

しかし、一歩引いて考えてみてほしい。見方を変えればラキシス以外の猛者たちをおさえ、しっかりと連対を確保している。また、ラキシスは昨年のエリザベス女王杯を制し、“史上最高メンバー”と謳われた有馬記念でジェンティルドンナから0.2秒差の6着だった馬だ。決してキズナが負けたことを恥じるような相手ではない。

今回のキズナは1.4倍というオッズに見合う馬ではなかった。だが、道悪が苦手なディープインパクト産駒が骨折明け2戦目(しかもGIの前哨戦)で2着になったと考えれば、それほど悲観視する内容でもなかったのではないだろうか?

それでもダービー馬なら……

そうはいってもキズナはダービー馬だ。多くの期待を集めるのは当然といえる。加えて最大目標を「凱旋門賞制覇」と明言するのであれば、日本のエースとしてフランスへ旅立ち、鞍上武豊で勝ってほしいというのが多くの競馬ファンの夢だろう。その前に足踏みしてほしくないと考えるのは自然な感情だ。

ただ、だからこそ、あまりガッカリせずに長い目で見ることも必要ではないだろうか?

これからキズナと武豊騎手が歩む道のりは平坦ではない。ディープインパクト産駒は天皇賞春と宝塚記念を苦手としている。前者は3000mを超える距離が、後者は重たすぎる馬場が原因で、いまだディープインパクト産駒は勝てていない。

しかし、いつの時代も“スターホース”というのは悪条件を克服して勝つ。だからこそ、ファンは驚き、感動し、涙する。キズナが“特別な馬”であるなら、厳しい条件を克服して期待と歓声に応えられるはずだ。

キズナは真のスターホースになれるのか? それとも“そこまでの馬”で終わってしまうのか? その答えは、残された春の2戦で明らかになる。

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