カテゴリー:競走馬コラム

エイシンヒカリと武豊騎手が刻んだ芸術的なラップとは?動き出した“夢の続き”

(C)Y.Noda

期待に違わない芸術的な逃げ切り勝ちだった。

5月16日に京都競馬場で行われたオープンの都大路ステークスに出走したエイシンヒカリ(牡4)と武豊騎手は、1番人気に応えて見せた。

13頭立てとメンバーは揃っていなかったが、マイルチャンピオンシップで3着の実績があるグランデッツァ(牡6)を完封したのだから価値が高い。何より、彼らが刻んだレースラップを見て、改めてエイシンヒカリの可能性の大きさと武豊騎手の手腕を感じずに入られなかった。

芸術的なレースラップ

まずは都大路Sのレースラップを見てみよう。

12.5-11.2-11.3-11.9-11.9-11.9-11.4-11.3-12.3

エイシンヒカリはスタートから先頭に立ち、最後までハナを譲らなかった。だからこの数字がそのままエイシンヒカリが刻んだラップということになる。

驚きべきなのは、前後半のタイム差が全くないことだ。

前半3F:35秒0│前半4F:46秒9
後半3F:35秒0│後半4F:46秒9

前後半3ハロン、4ハロンが全く同じタイムというのはなかなか見ない。陳腐な表現になってしまうが、まさに「芸術的」と表現するほかない。

しかも道中、一度も12秒台を刻んでいない。一貫したペースを刻み、後続に脚を使わせて逃げ切ったのだから、素直に「強い」と言っていいはずだ。

欅の向こう側に置き忘れた夢

エイシンヒカリが武豊騎手とコンビを組むと聞いた時、こんなコラムを書いた。

●関連記事→武豊騎手とエイシンヒカリに“欅の向こう側に置き忘れた夢の続き”を見よう

この記事を書いた時は、半信半疑な部分があった。個性的な逃げ馬に武豊騎手。人気にならないわけがない。期待値が高まらないわけがない。

期待を背負い過ぎている馬が期待に応えるのは簡単なことではない。正直、今なお実力より人気が先行している感は否めない。

しかし、スローの逃げ粘りという“まやかしの結果”ではなく、厳しいペースを自ら作り上げて勝ち切ってみせた。“あの馬”に重ね合わせるのは時期尚早であるものの、その将来に期待していい勝ち方だった。

おそらく次は再び重賞を使ってくる。真価が問われる一戦になるはずだ。

エイシンヒカリと武豊騎手、“欅の向こう側に置き忘れた夢の続き”は次なるステージへ続いていく。

【関連記事】
武豊騎手とエイシンヒカリに“欅の向こう側に置き忘れた夢の続き”を見よう


ハープスターがGI1勝に終わった4つの要因とは?背負った“十字架”に迫る

(C) Yusuke Tsutaya

どうしてハープスターは桜花賞しか勝てなかったのか?

5月7日に現役を引退したディープインパクトの愛娘のキャリアに疑問を抱く方は多いはずだ。爆発的な末脚を繰り出し、他の馬にはない特別な才能を持っていることは明らかだった。それなのに、GIタイトルは牝馬限定の桜花賞だけ。否が応にも物足りなさを感じてしまう。

なぜ、ハープスターはGIを一つしか勝てなかったのか? そのキャリアを紐解くことで、彼女が背負っていた“十字架”を解き明かしていこう。

要因① 極端すぎる脚質

最初に挙げられるのは、脚質が極端すぎたことだ。最後方に構えて直線で外を回して差し切る――。それがハープスターのスタイルだった。

新潟2歳ステークスの上がり3ハロンは32秒5、桜花賞は32秒9だった。強烈すぎる、鮮烈すぎる末脚を持っていたため、このスタイルを取ることができた。ただし、追い込み一気というのは現代競馬のスタイルに合わない。

馬場造園技術の向上により、内と外の馬場差がなくなってきている。よって単純に外を回した馬は距離をロスした分、不利になるケースが多くなっている。ハープスターの脚質では、もろに不利を受ける可能性が高いというわけだ。

オークスでは好位から早めに抜けだしたヌーヴォレコルトを捉えきれなかった。凱旋門賞では外からただ1頭伸びてきたが、勝ったのは内から抜けだしたトレヴだった。機能性がなければ現代競馬でコンスタントにいい成績を残すことは難しい。言い換えると、秀逸な末脚で能力の高さを示したとしても、結果につながるとは限らないのだ。

機能性不足――。それが大きな要因の一つだった。

要因② スターとなり試作が難しくなった

新潟2歳Sや桜花賞で後方一気のスタイルを確立させたことが、彼女のキャリアを難しくしてしまった。一度ハマったスタイルを変えることは簡単ではなく、先行を試みたり、馬群の中に入れてみたりしたが、試作はうまくいかなかった。

そもそも新しいチャレンジができるような環境になかったことが陣営にとって不幸だったといえるかもしれない。鮮烈な末脚に注目したマスメディアは彼女をスターに仕立て上げた。多くのファンは「外を回せば勝てる」と思っている。本当は先行させたかったとしても、それで失敗したら批判を浴びることは間違いない。そうなると、やりたいことがやりづらくなる。しかし、試作を試みることができなかった結果、敗戦を重ねることになった。

そういった“ジレンマ”に悩まされ、ハープスターのキャリアは影を落とすことになったのかもしれない。

【次のページへ】残り2つの要因は血統と競馬界の“悲願”?

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レッドリヴェールは復活できるのか?大成しないステイゴールド牝馬

(C)sleep

キャリアのスタートは華々しかった。

新馬戦、札幌2歳ステークスを連勝し、3戦目に挑んだ阪神ジュベナイルフィリーズでハープスターを撃破。GI馬の仲間入りを果たした。明け3歳の桜花賞でも2着となり、彼女の将来が明るいものになると誰もが考えたはずだ。

しかし、以降の道のりは決して平坦ではなかった。今回はそんなレッドリヴェールの“現在地”に迫っていこう。

狂った歯車

桜花賞を終え、陣営はオークスではなく、日本ダービーへの参戦を表明した。秋に凱旋門賞への挑戦を見据えたローテーションだった。

ところが、ここから歯車が狂いだす。

牝馬として64年ぶりにダービーを制したウオッカ以来の勝利を目指したが、420キロの小柄な馬体は馬群に沈み、12着に終わった。馬格の小ささは大きなネックとなり、輸送減りすることも分かった。凱旋門賞への挑戦を断念したことは、ご存知の通りだろう。

心機一転、秋は3歳牝馬の王道路線を歩んだが、休み明けのローズステークスで6着に敗れると、秋華賞でも6着止まり。さらにエリザベス女王杯では16着に沈み、見どころのないレースが続いた。

「レッドリヴェールは終わってしまったのか?」。そんな声が聞こえてくるほど、1年前にGI馬となった華々しい姿は霞んでしまっていた。

【次のページヘ】ステイゴールド産駒の特徴と“通説”とは?

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大種牡馬ブライアンズタイムの偉大さ!カフェブリリアントがGI戴冠へ

(C) masaminh

大種牡馬ブライアンズタイムの仔、カフェブリリアントが3連勝の勢いに乗り、GI戴冠へ名乗りを挙げた。

5月17日に行われるヴィクトリアマイルで初のビッグタイトル獲得を目指す。勝利すれば、ブライアンズタイム産駒として17頭目のGIウィナーとなる。

今回はそんなカフェブリリアントの父ブライアンズタイムにスポットを当ててみたい。

死亡してなお影響力のある種牡馬

ブライアンズタイムは、2013年4月4日午前、アロースタッドの放牧地で大腿骨を骨折して安楽死となった。28歳だった。健康に問題はなく、種付けを行った直後の放牧で転んでしまったことによる骨折であったのは惜しまれる。

彼は現在、JRA産駒勝利数第3位の種牡馬であり、彼の仔たち無くして、数々の名場面は生まれなかったといって過言ではない。種牡馬の中の種牡馬である。

死亡してなお、産駒が活躍しているのだから恐れ入る。しかも種牡馬としては超高齢といえる20代半ばに種付けした産駒たちなのだから、遺伝力の強さに感嘆する他ない。

“御三家”と呼ばれた90年代

種牡馬としての代表産駒はなんといっても20世紀最後のクラシック三冠馬となったナリタブライアンだ。ほかにもマヤノトップガン、タニノギムレットなど多くのGⅠ馬を輩出している。90年代には、サンデーサイレンス(16歳没、産駒勝利数1位)、トニービン(17歳没、同13位)とともに”御三家”と呼ばれるほど、影響力のある種牡馬だった。

タニノギムレット、マヤノトップガンは種牡馬としても活躍し、“女傑”ウオッカを筆頭に秀逸な馬たちを世に送り出している。なお、残念ながらナリタブライアンは種牡馬入り2年後、胃破裂を起こし亡くなってしまったが、存命ならば、活躍馬を輩出したに違いない。

07年以来のGI制覇へ

1991年から99年まで、毎年産駒GⅠ戴冠を果たしていた偉大な種牡馬はさすがに2000年代に入ってからペースダウンした。それでも2007年にヴィクトリーが皐月賞を制し、フリオーソがダート界で輝くなど、要所要所で存在感を示している。

当然のことながら“御三家”の産駒で残っているのはブライアンズタイムのみ。サンデーサイレンス系の勢いに押されてしまっているものの、偉大な大種牡馬の直仔が90年代に争ったサンデーの仔の産駒たちと走るというのも、またひとつ、血のドラマとして感慨深いものがあるのではないだろうか。

ヴィクトリアマイルでカフェブリリアントが勝利を飾れば、2012年のエリザベス女王杯におけるレインボーダリア以来の戴冠となる。果たして愛娘は父に久々のGIタイトルを届けられるのか? 興味深い着眼点の一つになるはずだ。

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キズナと武豊騎手の凱旋門賞挑戦断念が大正解な5つの理由とは?

(C) Yusuke Tsutaya

キズナが凱旋門賞への挑戦を断念した。

5月13日に発表された凱旋門賞(2015年)の一次登録リストの中に「KIZUNA」の名前はなかった。陣営は一昨年に挑戦して以降「再チャレンジ」を公言してはばからなかったが、登録は見送られた。事実上の「断念」と受け止めていいだろう。

ファンが多いダービー馬、しかも鞍上は武豊騎手だ。残念に思う方も多いはず。実際、私も願わくば「ダービー馬が鞍上武豊で凱旋門賞制覇」というシーンを見たかった。

ただし、この断念は決してネガティブな面ばかりではない。むしろ、以下のコラムで書いたように、キズナの将来を明るいものにするかもしれない。

●関連記事→キズナと武豊が天皇賞春で惨敗した5つの理由と英断への期待

断言しよう。凱旋門賞への挑戦を断念する判断は、大正解である。今回はその根拠を記していこう。

理由① キズナに凱旋門賞は合わない

これが一番大きな理由だ。ロンシャンの芝2400mはどう考えてもキズナが得意とする条件に合わない。キズナが生涯最高のパフォーマンスを見せたのはダービーであり、京都新聞杯だ。芝が軽い東京や京都を得意とする馬が、芝の重たいロンシャンで最高のパフォーマンスを発揮できるはずがない。

また、凱旋門賞は多頭数かつ馬群が密集した競馬になりやすい。キズナの脚質では大外を回すしかないため、どうしても距離をロスしてしまう。そうなると、好位からの抜け出しが“王道”である凱旋門賞で勝つのは難しい。

理由② 東京芝中距離がベスト条件

一方で日本の秋のGIシリーズはキズナに向いている。特に天皇賞秋とジャパンカップは東京の芝中距離で開催される。末脚が生きる舞台のため、十分勝ち負けになるはずだ。

また、天皇賞秋とジャパンカップはキズナと同じディープインパクト産駒のスピルバーグやジェンティルドンナが勝ったレースである。少なくとも凱旋門賞より適正があることは明らかだ。

【次のページへ】キズナは衰えていない?3つ目の理由は……

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